知っておくべき肥満治療薬ウゴービを保険適用で使用するための条件

「ウゴービってどんな薬?」
「ウゴービを使いたいけど価格が気になる」

ウゴービは、日本で初めて承認された肥満症治療薬です。
保険適用ができることから注目を集めています。
肥満に効くとはいっても、ダイエット目的で誰でも利用できるわけではありません。
ウゴービの処方を受けるにはさまざまな条件があるのです。

この記事では、ウゴービの保険適用条件や、処方を受けた場合の価格、他の医療ダイエットの薬との違いを紹介しています。
ウゴービが気になる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

ウゴービとは

ウゴービとは

ウゴービ(wegovy)とは、肥満症の治療薬として厚生労働省に承認されたGLP-1受容体作動薬の自己注射薬です。
2024年の2月22日より、保険適用での処方が可能となりました。

ウゴービには有効成分として「セマグルチド」と呼ばれる成分が含まれています。
セマグルチドは、糖尿病治療薬の「オゼンピック」「リベルサス」と同成分ですが、肥満症の治療薬として処方が可能になったことで、注目を集めています。

なお、ウゴービはあくまでも肥満症治療薬であるため、ダイエット目的の痩せる薬ではないことには注意が必要です。肥満症として、複数の条件に当てはまると医師が判断した場合にのみ、ウゴービが処方されるのです。

ウゴービの用量には0.25㎎、0.5mg、1.0㎎、1.7mg、2.4mgの5段階があり、0.25mgからスタートし、4週毎に増量していきます。「オゼンピック」と同様に、週1回、自身で皮下注射を行います。

参照元:ウゴービ皮下注射 添付文書|ノボ ノルディスクファーマ株式会社

ウゴービの保険適用条件

ウゴービの保険適用条件

ウゴービの処方を受けるためには、複数の条件をクリアする必要があります。

まず、高血圧、脂質異常症、または2型糖尿病のいずれかを有する肥満症があり、かつ食事療法と運動療法を行っても十分な効果が得られない人であることです。さらに、次のどちらかに該当する方が対象となります。

  • BMIが27kg/m2以上であり、2 つ以上の肥満に関連する健康障害を有する
  • BMIが35kg/m2以上

BMI(Body Mass Index)とは体重と身長から算出される体格指数のことです。成人の肥満度を表すための国際的な指標として用いられています。身長と体重がわかれば下記の計算式で算出することが可能であり、「BMI:22」が適正体重、「18.5〜25未満」が標準体重とされています。

<BMIの計算式>
BMI = 体重kg ÷ (身長m)2

また、適用条件の「肥満に関する健康障害」とは、次の疾患を指します。

  • 耐糖能障害 (2型糖尿病、耐糖能異常)
  • 脂質異常症(高脂血症)
  • 高血圧症
  • 高尿酸血症(痛風も含む)
  • 冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症)
  • 脳梗塞または一過性脳虚血発作
  • 非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)
  • 月経異常または女性不妊
  • 閉塞性睡眠時無呼吸症候群
  • 運動器疾患
  • 肥満関連腎臓病

参照元:厚生労働省 最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)販売名:ウゴービ皮下注
ウゴービ皮下注射 添付文書|ノボ ノルディスクファーマ株式会社

ウゴービの価格

ウゴービの価格

ウゴービの価格(公的薬価)は、薬の量により、次の5段階に設定されています。

  • 0.25mg 1,876円
  • 0.5mg  3,201円
  • 1.0mg  5,912円
  • 1.7mg  7,903円
  • 2.4mg  10,740円

上記の金額に保険が適用された額が自己負担費用となります。

使用するのは週に1回のペースです。薬の量は徐々に増やしていくため、最大量の2.4mgで3割負担の月額を計算すると、月額費用は以下のとおりです。

<ウゴービを使用する際の月額費用の目安>
10,740(円)×4(回)×0.3(3割負担)=12,899円(月額)

ウゴービに期待される効果

ウゴービに期待される効果

ウゴービは、GLP-1受容体作動薬であり、2型糖尿病治療薬として使用されているオゼンピックやリベルサスと同じ「セマグルチド」を主成分としています。
ウゴービを使用すると、他のGLP-1と同様に次の効果が期待できます。

  • 食欲を抑制する
  • 体重が減る
  • 血糖値の上昇を抑える

それぞれ解説します。

食欲を抑制する

ウゴービには、食欲をおさえる効果が期待できます。

食欲は、脳の視床下部でコントロールされています。
ウゴービを使用すると、薬の成分が満腹中枢に働きかけ、食事への興味が減り、食欲が減少することが判明しているのです。

さらにウゴービには、胃や腸のはたらきを抑制し、食べ物をゆっくり消化させるはたらきもあります。
消化スピードが緩やかになることで、食べ物が胃のなかに長時間留まり、満腹感を得られやすくなるでしょう。

参照元:厚生労働省 最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)販売名:ウゴービ皮下注

脂肪の燃焼を促進する

ウゴービをはじめとするGLP-1受容体作動薬には、脂肪の燃焼を促す効果があります。
体内の脂肪細胞に働きかけて熱を生み出し、基礎代謝を向上させることで、脂肪の燃焼を促します。

基礎代謝とは、体温維持・呼吸など、運動や活動をしなくても体内で消費されるエネルギーのことです。
基礎代謝は1日に消費されるエネルギーの約60%を占めるため、基礎代謝が上がれば、痩せやすい体質に近づくことができるでしょう

参照元:e-ヘルスネット「身体活動とエネルギー代謝」

血糖値の上昇を抑える

GLP-1受容体作動薬には、血糖値の上昇を抑えるはたらきがあります。
食事により上昇した血糖値に応じて、血糖値を下げる「インスリン」の分泌を促し、血糖値を上げる作用のある「グルカゴン」の分泌を抑制するのです。
食後の急激な血糖の上昇をおさえ、食後の血糖値を安定させることで、体への負担を軽減します。

ウゴービの注意すべき副作用

ウゴービの注意すべき副作用

ウゴービの代表的な副作用には、次のものが挙げられます。

  • 急性膵炎
  • 低血糖
  • 胃腸障害
  • 胆管炎

それぞれ紹介します。

急性膵炎

急性膵炎は、急激に起こる膵臓の炎症のことです。
吐き気や嘔吐など消化器症状とともに、激しい痛みが起こることが特徴です。
一度膵炎と診断された方は、再度ウゴービを使用することができなくなります

低血糖

低血糖は、血液中の糖の量が少なくなりすぎたときに生じる症状です。
他の糖尿病の薬とウゴービを併用すると、低血糖症状が出やすいことがわかっています。
程度には個人差がありますが、以下のような症状が出現します。

<低血糖症状>
  • お腹がすく
  • 冷汗が出る
  • 脱力感
  • 手足のふるえ
  • けいれん
  • 意識の低下 など

胃腸障害

吐き気や嘔吐、下痢や便秘などの胃腸障害は、ウゴービの使用後早い段階で出現する副作用症状です。
数週間でおさまることが多いですが、症状が続く場合には、薬の量の調整が必要になることもあります。

胆管炎・胆嚢炎など

ウゴービの使用により、胆管炎・胆嚢炎・胆汁うっ滞性黄疸が現れる可能性があるということがわかっています。
次のような症状が気になった場合は受診をしましょう。

  • 発熱
  • 腹痛
  • 吐き気・嘔吐
  • 白目や皮膚が黄色い(黄疸)
  • 尿の色が濃い
  • 体のかゆみ

参考:ウゴービ皮下注射 添付文書|ノボ ノルディスクファーマ株式会社

ウゴービの使用を考える際の注意点

ウゴービの使用を考える際の注意点

日本で初めて承認された肥満症治療薬ということもあり、ウゴービを使用してみたいと考える方は少なくないでしょう。
ここからは、ウゴービの使用に際して把握しておくべき注意点を紹介します。

保険適用の条件が厳しい

ウゴービの処方を受けられるのは、高血圧、脂質異常症、または2型糖尿病のいずれかと診断されている肥満症の方です。
また、6ヶ月以上にわたり食事療法と運動療法を行っても十分な効果が得られない方という規定もあります。

ダイエット目的でウゴービを使用したかったとしても、条件に当てはまらなければ処方を受けることができません
医療の力でダイエットをしたいと考える方は、自由診療で処方されている同じ成分の「オゼンピック」や「リベルサス」も検討してみましょう。

参考:厚生労働省 最適使用推進ガイドライン(案)セマグルチド(遺伝子組換え)

医師に処方を受けて使用する

ウゴービは、必ず医師に処方されたものを使ってください。
インターネットの個人輸入代行を利用することで購入することもできますが、極めて危険です。

通販サイトで購入した薬は、衛生的な環境で製造された「本物」であるという保障がありません。
中には粗悪品や偽造品が紛れている可能性があります。
厚生労働省も医薬品の個人輸入について警鐘を鳴らしています。
必ず医療機関を受診し、処方を受けた薬を使用しましょう

参照元:「厚生労働省|医薬品等を海外から購入しようとされる方へ」

取り扱いのある医療機関が限られている

ウゴービを取り扱うことのできる医療機関が限られていることにも注意が必要です。

厚生労働省の発表する最適使用推進ガイドラインでは、ウゴービの取り扱いをすべき医療機関の条件が挙げられています。
これらを満たす施設は、肥満症治療に関連する学会の専門医が常勤している教育研修施設となっており、具体的には、大学病院をはじめとする大規模な医療機関に限られます。
クリニックでは現時点では取り扱われていないため、処方を受けるハードルが高いといえるでしょう。

なお、ウゴービが発売されてからの約1年間は、2週間分の薬剤しか処方ができないことになっています。
つまり、継続的にウゴービの処方を受ける場合には、大規模な病院に2週間ごとに通院する必要があるのです。

参照元:厚生労働省 最適使用推進ガイドライン セマグルチド(遺伝子組換え)販売名:ウゴービ皮下注

医療ダイエットをしたいなら自由診療のGLP-1受容体作動薬がおすすめ

医療ダイエットをしたいなら自由診療のGLP-1受容体作動薬がおすすめ

ウゴービは肥満症治療薬ですが、保険適用の条件が厳しく、取り扱いのある病院が限られることから、ダイエット目的で気軽に使用できる薬ではありません。

医療ダイエットをしたい方には、自由診療のGLP-1受容体作動薬(以下GLP-1薬)がおすすめです。
ダイエットに使用されている代表的なGLP-1薬の特徴を比較してみました。

ウゴービ リベルサス オゼンピック サクセンダ
主成分 セマグルチド セマグルチド セマグルチド リラグルチド
適応疾患 肥満症 2型糖尿病 2型糖尿病 肥満症(日本で未承認)
投与方法 自己注射 経口 自己注射 自己注射
投与頻度 週に1回 毎日 週に1回 毎日

リベルサス

リベルサスはウゴービと同じ「セマグルチド」を主成分とするGLP-1薬です。
適応疾患は2型糖尿病であり、ダイエット目的で使用したい場合は自費診療となります。
リベルサスの大きな特徴は、飲み薬であることです。

1日1回、空腹時に水で服用すること、服用後30分は飲食しないなど、いくつかの条件がありますが、自己注射に抵抗がある方には使いやすい薬であるといえるでしょう。

参照元:リベルサス錠 添付文書

オゼンピック

オゼンピックもセマグルチドを主成分とする2型糖尿病の薬です。
週に1回自己注射します。

ウゴービとオゼンピックの異なる点は、最大投与量です。
ウゴービの最大投与量が2.4mgであるのに対し、オゼンピックは1.0mgです
成分量が多いほうがより効果的ですが、副作用も強くなります。

参照元:PMDA添付文書「オゼンピック皮下注2mg」

サクセンダ

サクセンダは、「リラグルチド」を主成分とした注射薬です。
毎日の自己注射が必要な薬です。
日本では未承認ですが、海外では肥満症の治療薬として使用されています
取り扱いのあるクリニックを受診すれば、自費診療で処方を受けることができます。

まとめ

まとめ

この記事では、ウゴービの保険適用条件や、処方を受けた場合の価格、他の医療ダイエットの薬との違いを紹介しました。

ウゴービを使用したいと考える方は、まず次の3点に注意しましょう。

  • 保険適用の条件が厳しい
  • 医師に処方を受けて使用する
  • 取り扱いのある医療機関が限られている

ダイエットをしたいと思っても、条件を満たしていない場合には、保険適応でウゴービを使用することはできません。
しかし現在、ウゴービ以外の医療ダイエット薬が手軽に試せる時代になりつつあります。
医療の力でダイエットを成功させたいという方は、自身に合った薬をぜひ探してみてください。

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